概要 Overview

量子科学の未来を拓くためには、物質・宇宙・計算・数理といった多様な分野の知見が融合することが不可欠です。本プロジェクトでは、理化学研究所の数理創造研究センター(iTHEMS)とUCバークレーのNSF Physics Frontier Center (N3AS) が連携し、量子物質、量子計算、量子宇宙、量子数理という密接に関係した4つの研究分野に焦点を当て、国際的かつ学際的な研究を推進します。

若手研究者の長期派遣制度や合同ワークショップを通じて、日米の研究者が密接に連携し、次世代の量子科学を牽引する人材と成果の創出を目指します。

研究分野紹介

量子物質 — Quantum Materials

  • 強相関クォーク系の創発現象
    クォークやグルーオンから原子核やハドロン物質がどのように創発するかを、格子QCDによる第一原理計算で解明します。国際共同研究を通じてスーパーコンピュータや量子コンピュータを駆使し、ハドロン間相互作用の普遍性を探究します。

  • 量子熱化ダイナミクスの普遍性
    孤立量子系における熱化現象の普遍性を、不純物や散逸を含む数理モデルと人工量子系を用いて理論・実験両面から解明します。若手研究者の交流を通じて日米の研究連携を深化させます。

  • 原子核・ゲージ理論の多体系研究
    有効場理論や非平衡ゲージ理論の量子多体系に関する研究を、日米の研究者の相互派遣を通じて推進し、量子物質に共通する理論構造を明らかにします。

量子計算 — Quantum Computing

  • NISQ時代の量子アルゴリズム開発
    誤り訂正なしでも物理的に意味のある量子シミュレーションが可能であることを示し、テンソルネットワークや量子古典ハイブリッド計算の新手法を日米共同で開発します。

  • 開放量子系とエラー緩和の理論構築
    量子回路を開放量子系として捉える新しい視点から、非エルミート量子系の理論を深化させ、効率的なエラー緩和技術の確立を目指します。

  • 量子多体問題への量子計算応用
    高密度QCD物質や超新星におけるニュートリノ、原子核反応など、多彩な量子多体系を対象とした量子計算の応用研究を進めます。

量子宇宙 — Quantum Universe

  • 重力波とクォーク物質の相関解析
    中性子星合体後に放出される重力波に潜む高密度クォーク物質の情報を、数値シミュレーションと連携して解析し、観測データに基づく新しい宇宙物理を切り拓きます。

  • ニュートリノ集団振動の量子計算
    高密度環境でのニュートリノ相互作用により起こる集団振動を量子計算技術で解析し、超新星爆発の精密モデル化を目指します。

  • 量子重力と宇宙創生の理論統合
    ホログラフィーや量子ブラックホール理論を軸に、宇宙初期やブラックホール蒸発などにおける量子重力の姿を新たな視点で探求します。

量子数理 — Quantum Mathematics

  • トポロジーと量子現象の普遍構造
    位相的場の理論や非エルミートトポロジカル相を通じて、量子多体系に共通する普遍構造の解明を物理と数学の協働で進めます。

  • エニオン統計と量子計算の数学構造
    トポロジカル量子計算を可能にするエニオンの統計性と量子もつれ構造を、作用素環論の観点から解析し、量子デバイスの理論基盤を構築します。